序項
もう学問から遠く離れてしまい、勉強なんてものにほとんど接する機会が無くなってしまった人の為に、つまり本書では、子供向けではなく大人向けにできるだけ分かりやすく心理学を伝えていきたいと思っています。
本書では、もちろん純粋に「心理学を好きになってもらいたい」と言った目的も持っているのだが、それだけではなく「勉強する面白さ」を少しでも実感して貰えれば私の目的は大方達成できたと言っても良いだろう。
すなわち、これから話していくだろう心理学の分野に限らず(もちろん心理学を好きになってもらえる事はとても嬉しい事なのですが)多くの物事に興味や学習意欲を持って貰いたいというのが真意であり、切実な願いです。
といっても(少々難しい話になってしまうのだが)、学習意欲という言葉は、日常用語としてよく用いられるが、心理学的に明確に定義された概念ではない。本書では、学習意欲を「種々の動機の中から学習への動機を選択して能動的活動を起こさせるもの」と定義する事にする。
さらに本項では、学習意欲、すなわち「自ら学ぶ意欲」については学習それ自体に関心があって取り組む内発的動機付けに加え、自己実現に向かおうとする外発的動機付けの2つに大別的に捉える事にする。
そして急によく分からない単語が出てきてしまったと思うので、補足を入れておきたいと思う。
・内発的動機付け
「何か得られるわけでもなく、誰かに褒められるわけでもないんだけど、絵を描くのが大好き!」
といった、何か目的の為にするのでなく、至純にその行為を楽しむ動機付け(motivation)の事を言います。
・外発的動機付け
「今度のテストで78点以上とれば、お母さんにジャイアンのおもちゃ買ってもらえるんだ!がんばるぞ!」
上掲のように、何かの為に動機付け(motivation)がされる事を外発的動機付けといいます。
様々な研究によれば、内発的動機づけによる活動は、外発的動機づけによる活動よりも、楽しく、質が高く、持続すると言われています。
例えば、試験を目的とし、勉強をしている時(外発的に動機付けられている時)は試験が終われば 、勉強をしなくなるでしょうし。試験が終われば、モジュールを使用しなくなるので、勉強した事も忘れられてしまうでしょう。
しかし、内発的動機付けの場合は何か外的な目的の為にするのでなく、内的な満足なためにするのです。
それは、
- 有能感: その活動を通して有能感が味わえるのが楽しい。
- 自己決定感: 自分自身で決定して動かしていることが楽しい。
- 対人交流:たとえばテニスやサッカー、教室での学習における仲間との交流が楽しい )
などの3のつ要因が相互作用していると考えらています。
本書では、いかに心理学が役に立つのか(外発的)では無くて、いかにそのもの自体の(内発的)面白さを伝えれる事に渾身を込めていくつもりである。